BMWから発売になった電気自動車i3は特殊なタイヤを装着して話題になっています。究極の燃費を求めると時代は専用タイヤの開発へ行くのか・・・

BMW初の電気自動車(EV)として今年4月から日本でも販売が開始(欧州では2013年11月発売)された「i3」。軽量だが高価な炭素繊維のボディ、観音開きのドア、天然素材の採用など、未来を感じさせる自動車として注目を集めている。

あまり知られていないが、i3に装着されたタイヤはユニークな特徴を持っている。幅は155ミリ(標準装着サイズ)という軽自動車で使用される細さに対し、タイヤ内径は軽用より4~6インチ大きく、SUVや大型セダン並みの19インチ。他の車では見られない狭幅・大口径サイズだ。単に形がユニークなだけでなく、既存の低燃費タイヤと比べて転がり抵抗は30%低減、濡れた路面でのグリップ性能は8%上回る。

■「タイヤの究極の姿を探った」

「ologic(オロジック)」と名付けられたこのタイヤを生み出したのはブリヂストン。F1(2010年に撤退)などレース用タイヤの研究開発を担っていた松本浩幸氏(タイヤ研究本部操安研究ユニットリーダー)と桑山勲氏(同フェロー)らが蓄積した技術を活かし、7年近くかけて開発した。

「タイヤの究極の姿を探った」という松本ユニットリーダーが、ブレークスルーのために導き出した答えが、既存のタイヤにはない、狭幅・大径という形だった。一般的にタイヤ幅を狭くすると空気抵抗が減少し、燃費の向上が得られる。しかし、狭幅化するとグリップ力が落ちるなど、いくつかのデメリットが生じる。

これらの解決策として取ったのが剛性アップ、新しいトレッドパターン(タイヤ溝)の開発、大径化の3つだ。

従来の低燃費タイヤより大幅に剛性を高め、変形によるグリップ力の低下を防いだ。トレッドパターンは既存の低燃費タイヤよりも溝体積を減らした。この溝を減らすとグリップ力は向上するが、排水性の低下やエネルギーロスが生じる。だが、狭幅化や高剛性化が排水性やエネルギー効率にはプラスと働く。ただ単に狭幅化や高剛性化すると乗り心地が悪化するが、これを大径化で回避した。

あちこちでトレードオフが生じる複雑な方程式。独自の計測システムをフル活用し、デメリットを最小に抑えつつ、メリットを最大限引き出し、燃費性能とグリップ性を高い次元で両立したタイヤの開発にメドがついた。

ただ、問題が残されていた。タイヤが特殊なサイズであるため、既存の自動車には装着できないのだ。だが、まったく新しいEVを開発していたBMWがこのタイヤを採用。標準装着を前提にi3が開発された。

BMWのEVに装着されたことで、この新型タイヤは一定程度アピールできた。実際、いくつかの会社から引き合いもあるという。だが今後、どれだけ採用を拡大できるかはわからない。車体設計の段階からカーメーカーとの協同が必要であるなど、これまでのタイヤの売り方とは大きく異なるからだ。「もう1段も2段も性能を引き上げていく」と話す桑山フェロー。激化する一方の燃費競争の中で、国内外の自動車メーカーが目を向ける可能性はありそうだ。

出典:東洋経済オンライン